「焼畑そば栽培2018(中編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播き直しから収穫作業。

7月末に畑焼して播種したそば畑は、干ばつによって雨が降らず発芽率は20%あまりと出だしの悪い状況となってしまいました。そこで、再播種することになりました。

■焼畑そばの再播種(8月27日)

「焼畑そば栽培2018(中編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播き直しから収穫作業。

ところどころ目が出ているソバはあるものの、播種した量からみれば無いに等しい状況です。

「焼畑そば栽培2018(中編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播き直しから収穫作業。
生命力の強い山の植物や雑草を手作業で取り除き、発芽しそうな箇所にやや多めの種そばを播いていきます。

「焼畑そば栽培2018(中編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播き直しから収穫作業。
全てが手作業。
労力が半端なく大変なんですが、そんな中でも楽しさがある。
普段、ソバを商売として考えていると栽培に関して深く考える時間なんて早々持てないですけど、こうやってみんなで協力して一つの方向に向かって作業していると純粋に美味しいそばに育ってほしい♪ っていう感情がわいてきます。

「焼畑そば栽培2018(中編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播き直しから収穫作業。
■結実(10月24日)
2度目の播種からしばらくしてまとまった雨が降ったおかげで、ポツポツではありますが生育して実が付きました。

「焼畑そば栽培2018(中編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播き直しから収穫作業。
雑草の合間にソバが育っているので、貴重なソバを踏んでしまわないようにソバの実を確認していきます。僕はソバが専門ですからどこに根付いているかひと目で分かりますが、普段見慣れていない人は区別がつかなくて大変そうでした。

「焼畑そば栽培2018(中編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播き直しから収穫作業。

■10月28日収穫 自然乾燥

2018年福井県美山町で行った「焼畑そば」の栽培から収穫、そば打ちまでの記録。

干ばつと台風で昨年より大幅減収となってしまいましたが、そば会で振る舞う量はギリギリ確保できたようです。そば会が楽しみです♪

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福井産夏新そばの”穂発芽”による酵素活性で、消化酵素アミラーゼが作用する利点と欠点について。

30年度の福井夏の新そばは、収穫が本格化するタイミングで長雨にさらされてしまいほぼ100%穂発芽してしまうという状況になりました。発芽していない粒でも実の中で根が動きだす、いわゆる「酵素活性」が起こっており、糖の変質によるソバの風味や味、繫がり具合が懸念されました。(※弊社サイトで販売しております夏の新そば粉は穂発芽していないものです)

そこで、穂発芽した夏新そばを福井県食品加工研究所へ持ち込んで糊化特性や食味、製麺性などを分析していただきました。(穂発芽についてはこちらのブログで説明しています)

福井産夏新そばの"穂発芽"による酵素活性で、消化酵素アミラーゼが作用する利点と欠点について。

穂発芽した夏の新そば(キタワセ種)糊化特性、食味、製麺性について

  1. 幼根が5mm以上伸びている穂発芽粒は糊化時に大幅な粘度低下をきたす
  2.  

    穂発芽粒100%のそば麺を食味評価したところ、正常粒のソバに比べ、食感、味の低下が認められた

  3.  

    ソバ由来のアミラーゼ活性は、ソバ粉よりも小麦粉に作用しやすいことから、小麦粉との混合は避けた方が良い

  4.  

    そば粉には麦芽糖(二糖)をブドウ糖(単糖)に分解する酵素が含まれており、小麦粉には澱粉を分解して麦芽糖を作る酵素があるのでつなぎ粉を加えることによって相乗効果で甘みが増す

  5.  

    正常粒に穂発芽粒を10%程度混合し十割ソバに利用する場合、食感に対する影響は概ね緩和できると考えられる


②の「正常粒に比べ、食感、味の低下がみられた」というのは、食品加工研究所にある十割ソバ製麺システムで製麺したそば麺を職員で食味試験した結果、正常粒のそば麺に比べて硬さ、弾力性という点について穂発芽そば麺は、柔らかい、弾力性がないという評価になります。福井の場合、ある程度の硬さと弾力性のあるコシの強い麺を高く評価しているからだそうです。
味については、穂発芽そばは正常粒に比べてソバ本来の味とは違う、違和感があったのではないかと感じられるとのことです。

また、興味深いのは③④です。ソバ由来のアミラーゼは小麦の澱粉を分解する作用があるので甘味が増える可能性があり、つなぎに小麦粉が入った方が甘味は強くなるそうです。工程は違いますが、これは長野県上田市の有名なそば店おお西さんの「発芽そば」と同じ原理なんだそうです。僕は2度ほどこのお店に行って発芽そばをいただいたことがりますが、そばの甘みが強く、うどんともラーメンとも異なる独特のモチモチ感がありました。また、発芽によるものなのかどうなのか分かりませんが、なんというか油っぽい草の香りというか枝豆の皮ような独特な香りがほのかに感じたことを記憶しています。

これだけを耳にすると蕎麦好きにしてみれば、食べてみたい・・打ってみたいと思われるかもしれません。
しかし、一つ問題点があります。それは甘みが増す=小麦のデンプンが糖に変わるというのは、言い換えれば小麦粉のグルテンやデンプンを分解するという事です。

打っている時は特に問題なく打てます。問題が起こるのは茹でる時。熱で消化酵素の働きが活発になるので、茹でた後にボロボロ切れ切れになってしまいやすいのです。なのでこの発芽そばを綺麗な麺線に仕立て上げるのには、そば粉の性質を見極めて打ち方や加水のタイミングなどを測れる熟練の技術が必要になっています。

もちろん小麦粉なしの十割で打つのもありです。
小麦粉が入らなければ消化酵素による分解(麺が切れる)も起こらないわけで、穂発芽そばの甘みをストレートに味わうことができます。ただこれはこれで十割を打つ技術が必要になりますし、小麦粉が入らなければすごく甘みが出るという事もないので、通常そばよりは甘みが強いと感じるくらいです。(穂発芽そばの十割打ちについてはこのブログで紹介しています)

今回、はっきりと穂発芽したソバを見たのは、僕がそば粉屋の仕事をするようになって初めてでした。
製粉して、打って、食べたことはとてもいい勉強になりました。今までは穂発芽してしまうと味や香りはもちろん、繫がりにくくなって売り物にならない=商品価値がなくなるという風に思ってきました。でも実際にやったことがあるわけではなく、父や農家さんから聞いたことを鵜呑みにしていただけです。

しかしこの経験から感じたのは、穂発芽したら商品価値がなくなるなんてとんでもなくて、むしろ別の価値が生まれるということでした。確かに製麺性は悪くなるし香りも別物になってしまうので、合う合わないはあると思います。でも穂発芽したソバにしか感じられない味わいがあるので、ソバの世界が大好きな人にはトライしてみてほしいと思います。

今後、穂発芽する年があった時には、穂発芽そば粉として販売する事も検討してみたいと思います。

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30年度 福井県産秋そば(福井在来)生育状況:ソバ播種後の雨に恵まれず干ばつで発芽しない圃場が続出。

30年度の新そばもなかなか先が思いやられます。
北海道は播種時期に台風による大雨で種そばが流されてしまい、再播種を行ったものの生育状況は悪く収穫量は例年の半減の見込みで、東北地方も同じ理由で北海道ほどではないにしろ、被害が出ているという報告が届いてます。

北海道産の新そば入荷時期は9月中旬頃ですが、現状から値上がりすることは容易に想像できますし、それでいて品質がどうか・・と言う状況です。品質と価格のバランスが取れない場合は弊社は今年の北海道産新そばの取り扱いを取りやめることを検討しております。あらかじめご了承ください。

さて、福井産について近況をお伝えします。

30年度 福井県産秋そば(福井在来)生育状況:ソバ播種後の雨に恵まれず干ばつで発芽しない圃場が続出。

8月上旬より播種が始まりましたが、その後、雨に恵まれず干ばつによって種そばが思うように発芽してこないという状況が続き、その間に鳥類の餌になってしまった圃場もあり、早々にまき直す圃場も見られました。同じ圃場でも芽が出て育っているところとこれから芽が出て・・というところで2週間~3週間ほどの生育のムラが出ています。

お盆前後にスポット的な雨により発芽していないところが一気に発芽したものの、生育のムラが出てままで推移しています。早く発芽したところとそうではないところで、収獲のタイミングをどこに持って行くかという判断が難しいところという意味では出足はあまりいい状況ではありませんが、現状はそれほど深刻ではなさそうです。

30年度 福井県産秋そば(福井在来)生育状況:ソバ播種後の雨に恵まれず干ばつで発芽しない圃場が続出。
福井市、丸岡町、あわら市など平野部は5㎝~20㎝。
大野市や勝山市などの山間部は10㎝~30㎝ほどに生育してきています(下の画像は大野市のそば畑)。

30年度 福井県産秋そば(福井在来)生育状況:ソバ播種後の雨に恵まれず干ばつで発芽しない圃場が続出。

先週の台風によってところどころ折れているソバが確認できましたが、背丈がそれほど大きくなかったのが良かったんでしょう。倒伏などはしてないですし心配無用だったようです。
去年が大凶作だっただけに今年のソバを期待する農家さんは多く、何とか無事に収穫を迎えてほしいです。

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ブルターニュ→帰国│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑩

5泊7日のガレット視察もいよいよ帰国の日。
毎日が濃密過ぎて5泊しかしていないなんて思えないくらい充実した視察になりました。
レンヌ発→パリ・モンパルナス行きのTGVを待つ間にブルターニュ線という車両を見ることができました。外国の鉄道は個性的なデザインですよね。

ブルターニュ→帰国│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑩
パリ行きのTGVが到着し、他方からきたTGVと連結♪
鉄夫ではないですが、滅多に見られない光景だから何でも新鮮に見えます(笑)

ブルターニュ→帰国│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑩
2時間余りの乗車でパリ着。
フランスの鉄道はこれでお終いと思うと名残惜しい。

ブルターニュ→帰国│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑩

空港まではバスに乗ります。
このバスは2つの車両がくっついたすごく長い市バスなんですが、これ女性が運転してるんですよ。しかも私服ってのがゆるくて良い!

ブルターニュ→帰国│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑩

車窓から見るフランスの街はやっぱり綺麗。

ブルターニュ→帰国│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑩
ニュースや広告、お天気などを知らせる電光掲示板と路面電車。
古さと新しさがいい感じのコントラスト。

ブルターニュ→帰国│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑩

今回のイベントと視察は二転三転したものの、結果的にとても素晴らしいものでした。
日本でもガレット文化がさらに発展していけるよう尽力していきます。
関わってくださった全ての方々に心から感謝します。

Je vous remercie sincèrement.
Merci beaucoup.

ブルターニュ→帰国│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑩


このブログでは、福井のそば粉屋として専門的な分野から、プロの話や技術、製法、栽培に関してなどをご紹介していきます。ガレット店の紹介や文化、観光に関しては以下のブログをご覧ください。
本場のガレットを求めて‐フランスブルターニュ訪問記

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レンヌ駅最寄りのそば粉工場、シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑨

レンヌ駅から一番近いそば粉の製粉所、シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)を見てきました。あいにく事前アポイントが取れず、工場見学はできませんでしたが、前日の夜にガレットを食べたレンヌ駅前のクレープリー レピ・デ・ブレ(Crêperie L’Epi de Blé)で使用していたそば粉がこちらのものだったので、雰囲気だけでも味わっておこうと思いまして。

この気持ちの良い青空と開けた対面道路にフランス車という光景がいいですよね♪

シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)は、レンヌ駅最寄りのそば粉工場。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑨

こちらも川沿いに工場があるところを見ると、前述のロンシン製粉所と同じく創業当時は水車から動力を得て石臼製粉していたのでしょう。田舎にポツンとあるそば粉屋であることは間違いないんですけど、とてもそば粉を挽いているようには思えない外観ですよね。

シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)は、レンヌ駅最寄りのそば粉工場。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑨

一番奥にサイロがあり、手前に昔使用していた面影のある水車があったのですが、水車はゆっくり動いていたので、ひょっとしたら今でも1台か2台くらい石臼で製粉しているのかもしれませんね。

 

シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)は、レンヌ駅最寄りのそば粉工場。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑨
窓から工場内を覗くとシャルボニエール製粉所を象徴するかのような、いかにも年季の入ったロール製粉機が見えました。日本だとせいぜい20年から30年もすれば機械の老朽化が進んだり、時代に合わなくなって機械類を入れ替えたりするものですが、増改築したような痕跡がないんですよね。これはロンシン製粉所も同じで、創業してから今まで時代が変化してもフランス国内にある製粉所に関しては今も昔も需要と供給のバランスが保たれているということなのでしょうね。おそらく大きく儲けることはできないが、生活が苦しくなることもない。ほどほどの生活を送ることができる商売なんだと思います。

シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)は、レンヌ駅最寄りのそば粉工場。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑨

売店ではシャルボニエール製粉所のそば粉を始め、そば蜂蜜やゲランドの塩、小麦粉も販売していました。

シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)は、レンヌ駅最寄りのそば粉工場。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑨
ブルターニュ原産の玄そば。
小粒でグレーっぽい色味を見る限り品種は「ル・アルプ」でしょう。

シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)は、レンヌ駅最寄りのそば粉工場。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑨
ラベルがかわいいBIOのそば粉。

レンヌ駅最寄りのそば粉工場、シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑨

工場を横を流れる穏やかな川の流れ。

シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)は、レンヌ駅最寄りのそば粉工場。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑨

まるで映画の世界にいるかのようなウソみたいな景色です。
ここ、そば粉屋さんですよ!

シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)は、レンヌ駅最寄りのそば粉工場。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑨

今回訪れたロンシン製粉所とシャルボニエール製粉所以外にもブルターニュ地方にはたくさんの製粉所があります。僕はそば粉屋の前にモノづくりが大好きで、原料から製品が出来上がるまでの過程となぜそういう風になっていったのかを知ることが大好きなので、時間と言葉さえ何とかなれば一つ一つじっくりとブルターニュのそば作りについて見て回りたいと思いました。

この後、レンヌからTGVでパリにもどり、日本へと帰国の途についたわけですが、大雪の福井が温かいと感じるくらい、2月のブルターニュは寒かったです。次回ブルターニュに来る機会があれば、その時には在来種の圃場や生産者、乾燥調製施設なども見てみたいです。

[シャルボニエール製粉所(Le Moulin de Charbonnière)]
Maison Blanche, 35760 Saint-Grégoire, France
+33 2 99 63 12 08


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本場のガレットを求めて‐フランスブルターニュ訪問記

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「焼畑そば栽培2018(前編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播種作業。

福井市から車で1時間ほど離れた山間の美山町で「焼畑でそば作り交流会」という会に参加させていただきました。美山町はその名の通り、「美しい山」に囲まれた自然豊かな地域で「南宮地在来」という品種のソバを長年、作り続けているところです。
「南宮地在来」は作付面積や収穫量が極めて少ない為、基本的に地産地消で、私ども製粉業者にはまず入ってくることはありません。僕は美山町のそば祭りなどで何度か食べたことありますが、焼畑・天日干しで作られる蕎麦は、香ばしく弾力があってそれでいて喉越しがいい何とも気持ちのいいお蕎麦だなという印象があります。

焼畑栽培は頭では分かっていても実際にどのようにして行うのかということに興味があり、交流会に参加させていただくことになりました。

■畑焼作業(7月29日)
30度以上ある急こう配の一部を消防団立会いの下、畑焼作業を行いました。

「焼畑そば栽培2018(前編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播種から収穫。
木の根やツルなどを切り取り、ソバの生育に影響を及ぼす雑草なども細かく除去していきます。

「焼畑そば栽培2018(前編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播種から収穫。
種そばを播種したら囲いの棒を立てていきます。
山の中とはいえ、真夏の作業なので汗だくでした。

「焼畑そば栽培2018(前編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播種から収穫。

看板をあしらって・・

「焼畑そば栽培2018(前編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播種から収穫。

アニマルトラップを仕掛けます。

「焼畑そば栽培2018(前編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播種から収穫。

ネットを張り巡らせ、アニマルトラップの電力をオン!

「焼畑そば栽培2018(前編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播種から収穫。

2週間経過した圃場の発芽率は思っていた以上に低く寂しいものでした。
というのも、2018年の夏は干ばつが続き、雨が全く降らなかったため、ほとんどの種そばが発芽せず風に飛ばされてしまったり、2週間の間に山の獣や鳥類に食べられてしまったことも影響していると思います。

そこで後日、再播種を行うこととなりました。→中編に続く。

「焼畑そば栽培2018(前編)」福井県美山町で行った焼畑そばの播種から収穫。

■焼畑農業(栽培)とは?
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焼畑農業とはまず必要な分だけ森を焼きます。そしてその灰により土壌を中性化しまた肥料として作ります。そして2,3年すると養分が少なくなるので別の場所へ移ります。しばらくすると木が生えてその後、森ができます。そして森がもとどおりになった所でふたたび森を焼きます。これが焼畑農業です。

 

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福井在来種の播種直後に起こる湿害を防ぐ対策として、小畦(こうね)立て技術を用いた秋そば播種が始まりました。

いよいよ福井の秋そばも播種時期を迎え、県内そば産地では7月下旬より福井在来種の播種はが始まっています。炎天下の中で畑を耕して種を播いていく作業は、機械を利用するといっても農家さんにとって過酷な環境での作業になるため、体調管理には注意して進めていただきたいと思います。

福井在来種の播種直後に起こる湿害を防ぐ対策として、小畦(こうね)立て技術を用いた秋そば播種が始まりました。
そんな中、福井はこのところ晴れ続きで雨がありません。播種しても土中の水分だけでは発芽まで至らない圃場もすでにいくつか出てきており、土が湿る程度の弱い雨が欲しいところです。ソバの天敵である台風は連発してありえない動き方をしていますから、まとまった雨が降る前に一定の高さまで育ってもらいたい気持ちです。

福井県は県全域で在来種のソバを作付する全国的に見ても特色あるそば作りを行っている在来種王国として認知されつつあります。しかし、福井のソバは転作作物として水田での作付が多いことから湿害を受けやすく、収量が不安定であることが長年の課題です。そこで福井県農業試験場が、特に被害を受けやすい播種直後の湿害を回避軽減するための技術として「ソバ小畦立て播種技術」というものを開発しました。

ソバ小畦(こうね)立て播種とは・・

種子を地下に埋めず、地表面に並べておいて種子の両側から土を切り盛りして、覆土しながら排水溝と畦を同時に成形します。通常より種子を高い位置に播種できること、ならびに種子の周囲に排水溝ができることから種子が長時間水没するリスクを軽減することができるというものです。

播種直後の湿害を回避軽減するため、小畦(こうね)立て技術を用いた福井在来種の秋そば播種が始まりました。

▼写真上が通常の播種、写真下が小畦立て播種
通常の播種は等間隔で水はけを良くするための溝切りを行い、筋蒔きでソバを播種していきます。小畦立て播種は細かい盛土によって水はけのための溝ができています。

播種直後の湿害を回避軽減するため、小畦(こうね)立て技術を用いた福井在来種の秋そば播種が始まりました。

そもそも湿害はどうして起きるのか・・

通常、ソバの播種は播き溝を切って種子を落とし、土をかけて埋めるという工程で行われます。しかし、種子の周囲に水が溜まるような強い雨が降ると湿害が発生し発芽不良を起こします。また、種子が完全水没するような状況になれば発芽自体しなくなり、その後、水が引いたとしても湿害に遭ったソバは発芽しません。

小畦立て播種によって期待できる効果

小畦立て播種によって発芽後の根元の湿度が低下するほか、根の周囲の通気性が良くなる為、立ち枯れのリスクが抑えられます。また、圃場全体の生育が揃うので、雑草の発生を抑制できます。
もともと終了水準が高い条件では収量性に大きな違いは現れませんが、排水性の悪い圃場など収量水準が低い条件では、小畦立て播種の方が多収となります。これは、小畦立て播種により出芽・苗立ちが安定することに加え、株の生育が良好となるため、花房の着生が少なくなる条件でも着粒が安定するためだと考えられます。

昨年は過去に例を見ないほどの大凶作だった福井在来種。
今年は豊作になってほしいなんて贅沢は言わないので、せめて例年通りに採れてほしいと願うばかりです。

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ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<後編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑧

ロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)視察の後半は、フランス・ブルターニュで昔から栽培されている在来種と福井の在来種を見比べながら栽培から製粉、苦労話について情報交換させていただいたことと、ロンシン製粉所を始めとするフランス国内で昔から使用されていた石臼について紹介していきます。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<後編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑧▲ロンシン製粉所Jean-julien Genest(ジャン=ジュリアン ジェネス)社長

テーブルには、ブルターニュ地方で昔から栽培されている在来品種「ラ・アルプ種」と「ジタ種」、そして「福井在来種」を並べて日仏そばサミットを始めたのですが、時間にして2時間は超えているでしょう。専門家同士の話し合いはとても熱く、止まりませんでした。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<後編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑧
まず「ラ・アルプ種」は在来というだけあって2.8mm~3.2mmくらいの小粒が多く、粒が膨れていて皮の色がグレーがかった濃茶色。容積重があるからズシッと重みがあって福井在来にとても似ています。数粒食べてみるとナッツに似た香ばしさとほんのりとした苦み。これは日本と違って乾燥歩合が高く、含水率を4%近くまで下げているからであって、日本と同じように14%前後で低温乾燥させて石臼でじっくり製粉すれば、風味豊かで味の濃い蕎麦が味わえるのではないかと思いました。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<後編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑧
一方の「ジタ種」は全体的に4.5mm以上の大粒が多く、歩留りが良いのが特徴だそうです。皮の色は濃茶色で日本のキタワセにそっくり。そのまま食べてみると「ラ・アルプ」よりも味・香りともにさっぱりしていて最後に香ばしさが舌に残ります。

フランスではソバは基本的にガレットに使用され、パリ市内のスーパーでも小麦粉と同じように陳列されているほど、フランス国民の食文化として浸透しています。そのため焼いた時に香ばし香りが立ち、長期保存にも耐性を持たせるために原料の段階で含水率を10%以下、そば粉の製品になった時点で4%以下にしているそうです。なので、玄そばを食べ比べても日本人の感覚で言うところのそばの香りとは違います。逆にジャン社長からしてみれば、おそらく福井の在来種の味わいや香りには違和感があったと思います。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<後編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑧
ラ・アルプ種を原料に機械製粉(ロール製粉)したそば粉。左から皮粉、内層粉、外層粉。
日本のように更級そばや田舎そばがあったり、打ち粉を取るという事自体がないので、1番粉~5番粉、末粉というように細かい挽き分けというのはせず、大まかに3タイプの粉を連続して製粉し、
顧客が指定するそば粉にブレンドするそうです。

100年近く前までは実際に使用していたという石臼。
日本の石臼とは大きさも石材も目の立て方も全く違います。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<後編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑧
石自体は気泡が多くみられ硬質で、透明な結晶体もかなり含まれていました。風化して切り目がだいぶ飛んでいますが、内側と外側で目の角度が異なっています。おそらく、そこそこ早い回転数で石臼を回して内側でソバの実を挽き割り状に、外側で一気に粉砕していくのでしょう。この石臼を見る限り、日本のように製麺効率を考えてそば粉に粘りを引きだすとか、じっくり細かく粉砕するということは関係なく、あくまで「穀物を粉にする」という使い方だと思います。当然、この臼では1回や2回通しても完全には挽ききれないので、粉になるまで連続して通して行ったのではないかと想像します。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<後編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑧
どれくらい使用され続けてきたかは分かりませんが、石臼の厚みは20センチ弱。重さは下臼だけで300㎏近くあるでしょう。こんな石臼が回ってる光景ってどんなんでしょうね。考えるだけでワクワクしますし、どんな摩擦音が響いていたのか妄想は止まりません。
フランス国内に存在する製粉工場はほとんどが機械製粉で石臼製粉を守っているところはわずかしかないそうです。しかし、機会があればぜひ見てみたいものです。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<後編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑧
昔は工場横にあるこの川で水車を回し、動力を得て石臼を回していたそうです。なのでフランスの製粉工場はこういった川沿いにあることが多いそうです。弊社も創業当時は工場前の水路で水車を回していたので、国は違えど同じようなことをやってきたんだなーと感慨深くなりました。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<後編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑧

それにしても2月のブルターニュは寒いです。
雪がないので暖かそうに見えるかもしれませんが、気温は日本よりずっと低くて手が悴みます。でもこの環境によってブルターニュの在来そばが育まれ、この場所で製粉されるからこそ本場フランスのガレットがあるだと思うと、地球の裏側からブルターニュにやってきて良かったなと思いました。

▼弊社ホームページにて詳しくご紹介しております。
その①:【玄そば生産農家紹介】Minoterie de Roncin (ロンシン製粉所)を訪ねて (フランス・ブルターニュ)

その②:【玄そば生産農家紹介】Minoterie de Roncin (ロンシン製粉所)を訪ねて (フランス・ブルターニュ)


このブログでは、福井のそば粉屋として専門的な分野から、プロの話や技術、製法、栽培に関してなどをご紹介していきます。ガレット店の紹介や文化、観光に関しては以下のブログをご覧ください。
本場のガレットを求めて‐フランスブルターニュ訪問記

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ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦

レンヌ駅から車で1時間ほどのところにあるロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)は、八方をそば畑に囲まれた大自然の中にあります。ブルターニュ原産の在来品種(ル・アルプ種)の他に(ジータ種)を製粉する工場です。

視察に行ったのは2月なので畑には何もないですが、季節が来ると一面がそば畑になるそうです。この平地に広がる真っ白なじゅうたんは素晴らしく綺麗なんでしょうね。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
フランスの製粉工場は、日本と同じように昔は石臼製粉がほとんどだったらしく、水車から動力をえる為に工場は川沿いに建っています。ロンシン製粉所も同じく、大昔はイヴェル川から動力を得ていたそうで、水車や当時の石臼などその名残が随所にありました。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
ロンシン製粉所では、一つの機械でそば粉と小麦粉を交互に製粉しており、そば粉は主にブルターニュ産の在来を使って取引先の要望に合わせて外国産をブレンドしているそうです。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
工場見学に関して僕たちは言わば外国人ですし、ちょっと閉鎖的な感じなのかな・・とドキドキしていたのですが、クレープリー・ラ・ビオレットの会長さんのお力添えのおかげで本当に急なお願いにも快くご対応いただけたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦

原料の切込み。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
ジャン社長自らフランス産玄そばの栽培や品種、乾燥調整などの説明をしてくださいました。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
20代の頃、スコットランドへ蒸留所巡りをしたことがあるのですが、ウイスキーの原料である麦芽を狙って蒸留所内に寄りつくネズミや害虫を駆除する目的でモルトキャットという番犬ならぬ番猫が飼われていたのですが、これはそのフランス版サラザンドッグでしょうか(笑)
工場の敷地内に2.3匹ほど放し飼いにされているのを確認したのですが、すごくゆるくて人懐っこい。僕の手をたっぷりのよだれで舐めてくるので後が大変でした。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
製粉機械はドイツ製だそうです。
形は違えど、一通りの工程や機械類に大きな違いは見られません。昔の機械を今なお大切に使っているように感じました。日本だと20年~30年周期でその時代に合わせた最新設備を導入し、製粉コストや製粉精度を高めていきますが、フランスでは製粉に関しては要は細かく粉砕できればいいという感じなのでしょう。日本のように製麺性を良くするとか、製造技術を高めるような必要がそんなにないのかもしれません。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦▲石抜き
▼粒揃え

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
▼ロール製粉機

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
日本ではロール製粉の場合、脱皮して製粉するのが一般的ですが、ブルターニュでは玄そばを皮付きのままロール製粉します。そのため、当然ながら皮に付着する農薬や化学肥料は不使用です。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
ロール製粉機を通していくほどに皮も実も細かく粉砕されていきます。
皮は最後まで細かくなりにくいので、最終的に皮だけを集めて再度、ロール製粉機に通して、後ですべての粉をブレンドするそうです。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
製粉しブレンドされたそば粉は自動計量されて製袋します。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦
製袋したそば粉は商品ごとに保管し、この状態で3ヵ月~半年ほど熟成させて出荷するそうです。この状態を「熟成」と言っていいのかどうかは置いといて、とにかく寝かすことによってそば粉の含水率が下がり、粉と水が馴染み易くなるんだそうです。日本的感覚だと、そんなに放っておいたらソバの香りも品質も悪くなってしまうと思いますが、ガレットに使用するためには必要な工程のようです。

ブルターニュ産そば粉を製造するロンシン製粉所(Minoterie de Roncin)<前編>│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑦

ロンシン製粉所の製造ラインを拝見した後、場所を移してブルターニュと福井のソバ栽培や品種について話し合いました。その様子は次回お伝えしますが、ジャン社長からお聞きしたすべてが新鮮と驚きに満ちた経験になりました。

▼弊社ホームページにて詳しくご紹介しております。
その①:【玄そば生産農家紹介】Minoterie de Roncin (ロンシン製粉所)を訪ねて (フランス・ブルターニュ)

その②:【玄そば生産農家紹介】Minoterie de Roncin (ロンシン製粉所)を訪ねて (フランス・ブルターニュ)

[ロンシン製粉所 (Sarl Minoterie de Roncin)]
Rue Moulin Roncin, 56800 Ploërmel, France
+33 2 97 74 01 37


このブログでは、福井のそば粉屋として専門的な分野から、プロの話や技術、製法、栽培に関してなどをご紹介していきます。ガレット店の紹介や文化、観光に関しては以下のブログをご覧ください。
本場のガレットを求めて‐フランスブルターニュ訪問記

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フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥

初めてのフランスで初めてのブルターニュにやって来て、僕はブルターニュのガレット文化の奥深さとブルターニュに住む人々の食文化に驚きを隠せませんでした。というのも、ブルターニュの玄関口レンヌからレンタカーに乗り換え、サン=マロへ向かう途中の大型スーパーに立ち寄った際に衝撃の光景を目の当たりにしたのです。

▼ブルターニュの大型スーパー
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥
▼食品売り場
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥
まず、いきなり驚かされたのが、入り口入ってすぐのコーナーにサンドイッチやデザートパンに紛れて三角のおにぎり型に包まれたガレットが売られているコーナーがあったことです。注文すると紙に包まれた商品を手渡しでもらえてイートインコーナーで食べることができます。

▼テイクアウト専門のワンコーナー
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥
次にメーカーの異なるガレット生地だけの商品や具材が包んであって温めて食べる商品など、ガレットだけを取り扱うコーナーがしっかりと設けられています。

▼ガレットの生地だけを取り揃えるコーナー
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥
▼ブルターニュ産そば粉を使用したガレット生地
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥日本ではそば粉や生そばが産地表記されてスーパーで販売されていても第3者機関などが中身まで深く調査することがないので、どうしても疑念が浮かんでしまいます。しかしフランスを始めヨーロッパ諸国はトレーサビリティに関して非常に厳しく管理されていますし、ましてBioになれば行政や組合などさらに厳しい審査機関によって管理されています。また製粉所に関しても社長や会社の意図で製造を行うことはできないようで、クライアントや管理機関の指示通りに決められた量の製品を製造するのだそうです。

▼BIO認定のブルターニュ産そば粉を使用したガレット生地
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥
▼電子レンジやフライパンで温めるだけの具材が包まれたお手軽ガレット
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥▲左:ソーセージガレット/右(2種類):ジャガイモとリンゴのガレット、ベーコンと玉ねぎのガレット

▼左:エメンタールチーズとハムのガレット/右:ソーセージガレットと塩キャラメルクレープのセットフランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥
そば粉、生地だけ、加熱前のもの、今すぐ食べるものなど、TPOに合わせて色々なガレットが手に入るブルターニュでは、毎日何かしらのガレットを食べると言う人も珍しくないようで、ガレットがあまりにも身近で人々の生活にグッと密着しているような気がしました。

▼最新のガレット&クレープ焼き器(流れ作業のようにガレットが出てくるそうです)
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥
粉類コーナーも充実。
そば粉だけでもメーカーの異なる製品が10種類近くあり、小麦粉も同じくメーカーの違うものが20種類以上あって、大型とはいえ地元密着のスーパーでこれだけの品ぞろえがあるってすごいなぁーと驚きの連続でしたが、よく考えてみれば日本で言うところの産地や品種ごとに並べられたお米みたいなものですから、パン文化の国としては当たり前といえば当たり前ですね(笑)

▼粉類(Farine)コーナー
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥
そば粉に記載してある「Farine de blé noir de Bretagne」という文字列は、「ブルターニュ産そば粉」という意味です。Farine=粉/blé noir=ソバ(直訳すると黒い小麦。”Sarrasin”が一般的ですがブルターニュではソバを指します)/de Bretagne=ブルターニュの(ブルターニュ産)

観光客向けにブルターニュ土産コーナーもありました。
地元産を使用したガレットやクレープ、ブルターニュの国旗が刻印された焼き物、旗、ステッカーなどなど、妙にそそるものばかり(笑) ブルターニュ地方ではコカコーラやペプシコーラよりメジャーだと思われるブレッツコーラなるものもありました。

▼ブルターニュ産直コーナー
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥
それからさすがブルターニュ!と思ったのは、家電コーナーに当たり前のように売られている色々なガレットパンを見た時です。おもちゃみたいな簡易版から本格的なもの、1度に2枚焼けるものやガレットを焼きながら隣で調理もできるような複雑なものまで本当に多種多様。日本ではまず手に入らないものばかりなので、重さが気にならなければ1台買って帰りたい!と思ったほどです。
価格は3,000円~50,000円とかなり開きがありましたが、価格の差は機能やクオリティの差という感じで、自宅でもプロさながらのガレットが焼けそうな気がしますよね。

▼家電コーナー売られているガレットパン
フランス・ブルターニュ地方は、ガレットが食文化として人々の生活に溶け込んでいる。│ガレット(Galette)に触れるフランス視察⑥

ガレット以外にもまだまだ書ききれないほど、このスーパーには驚きが詰まっていましたが、トレーサビリティの事に関しても福井の越前そば文化はもとより、日本の蕎麦文化よりもブルターニュのガレット文化の方が食文化として根強いんじゃないか・・ということを考えさせられました。

ブルターニュで栽培されたオーガニックのそば粉を使ったガレットがいつでもどこでも、手軽に食べられて本格的に作る事もできる。ブルターニュの住民の生活の”そば”に「そば」がある。たった数時間でしたが、非常に興味深い体験のこのスーパーでさせてもらった気がしました。

さて、いよいよ次回はフランス・ブルターニュに来た最大の目的である、ブルターニュ産そば粉の製粉工場を視察します。ブルターニュとソバとガレット文化の本質を知り、日本のガレット文化との違いを探るのですが、実はフランスに着いた段階ではどこのアポイントも取れておりませんでした。

というのも、今回の渡仏はちょっとしたご縁から突然に決まったことで、とても工場見学のアポイントを取れる時間がなかったのです。僕たちもそうですけど、どこの馬の骨か分からない外国人がふらっと現れて、そう易々と工場見学など受け入れてくれる製粉所はありません。
パリでのイベントの時、フィションさんにファティゲ製粉所へのアポイントを取っていただいたのですが、当日になって訪問することが出来なくなり、かといって強行突撃したところで怪しまれて終わりです。何より失礼ですしね。

そこで、まずはブルターニュで有名なガレット店であるバン・ド・ブルターニュのCrêperie La violetteさんにて食事することにしました。パリで食べるガレットよりも生地の香りや味が強く色も濃い。蕎麦で言うなら田舎そばな感じでとても美味しかった。シェフに日本からガレットを勉強しに来たということ、ブルターニュのガレット文化について、そば粉の挽き方や品種など、色々な質問をさせていただいて、最後に今から見学させてくれる製粉所はないでしょうか?と質問したら、なんとその方はブルターニュ製粉組合の会長さんで、僕たちの熱意を汲み取っていただいたのか、すぐに数件の製粉工場へ連絡してくださることに。それが今回、視察を受け入れてくださったところです。

数分後、アポイントを取ってくださり、念願のブルターニュ産そば粉を製粉する工場を見学させていただけることになりました。


このブログでは、福井のそば粉屋として専門的な分野から、プロの話や技術、製法、栽培に関してなどをご紹介していきます。ガレット店の紹介や文化、観光に関しては以下のブログをご覧ください。
本場のガレットを求めて‐フランスブルターニュ訪問記

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