二八蕎麦を打つ時には、そば粉8割に対して2割のつなぎ粉(小麦粉)を加えて打ちますが、そば粉同様、つなぎ粉は小麦の産地や品種、製粉方法、精製度合などによって含まれている成分が微妙に異なり、製粉メーカーによってもいろいろな種類や特徴があり、蕎麦の食感や仕上がりが異なります。日本各地の蕎麦粉を取り寄せて打ち比べるのも面白いですが、そば粉は固定しておいてつなぎ粉をいろいろ変えて打ってみるのもまた楽しいものです。
よく弊社にご質問をいただくのは、「そば打ちに使うつなぎ粉で中力粉と強力粉は何が違うのか?」また、「蕎麦のつなぎ粉には、どちらを選べばいいんでしょうか。」というものです。
■「中力粉」と「強力粉」の違いは?
「中力粉」はそば粉に例えるなら1番粉から2番粉の部分を製粉した小麦粉で、適度な粘りとデンプン質のつるつる感を持った粉になります。麺類では、ラーメン、そうめん、冷麦、うどんなどに適しています。
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「強力粉」は1番粉から3番粉の少し手前までの部分でを製粉した小麦粉で、中力粉より粘り成分グルテンの含有量が高く、麺類というよりはパンや焼き菓子、ピザ生地、餃子の皮などに適しています。ちなみに、そば打ちにはあまり使用しない「薄力粉」は、1番粉の粘りの薄い部分を製粉した小麦粉で、うどんを打つ際の打ち粉や料理のとろみ付け、カレールーなどに使用されます。
■打ちたい蕎麦や、用途で使い分ける「中力粉」と「強力粉」。
一般的に二八蕎麦のつなぎ粉として広く使用されているのは「中力粉」で、つるつるとした食感と適度なコシ、のど越しの良い蕎麦になります。一方、「強力粉」は中力粉に比べるとつるつる感は多少薄くなりますが、中力粉よりもグルテン量が多い分つながる力が強いのでモチモチした弾力ある蕎麦に仕上がるので、蕎麦をしっかりと噛んで味わう地域などでは多く使用されています。福井でもつなぎ粉に強力粉を買い求められる方が割と多いです。
また、九一(くいち)蕎麦 [そば粉9割:つなぎ粉1割] や、外一(そといち)蕎麦 [そば粉10割:つなぎ粉1割] のようにつなぎ粉の量を少なくして打つ場合や、粗挽きそば粉のように繫がりにくいそば粉を打つ場合には強力粉のようにグルテンの高い小麦粉を使用することで、蕎麦の味わいを生かしつつ繋がりにも配慮される方もいます。
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■小麦粉の灰分(はいぶん、かいぶん)とは?
小麦粉の色や等級づけの目安になる「灰分(はいぶん、かいぶん)」は、数値が低い(灰分の少ない)と輝くように明るく綺麗な色の小麦粉になり、一般に上級粉として扱われます。そば粉で例えると更科粉です。
数値が高い(灰分が高い)小麦粉は、くすんだ色味で舌触りが悪く下級粉として扱われます。しかし、灰分が高いということは小麦の内側から外側のふすまの部分まですべての粉が含まれるいわゆる全粒粉になっていくので、ミネラルや食物繊維が多く、栄養的にみればいいことです。
そば打ちにおいては、強力粉は中力粉よりも灰分が高いので関東風な白っぽいそば粉で蕎麦を打つ時には、ふすまの色が出て麺線がくすみがちになることもあります。ですので、白っぽい蕎麦を打つ場合は「中力粉」、田舎蕎麦や粗挽き蕎麦を打つ場合には強力粉と用途に合わせて使い分けていただくと良いと思います。のど越しと繋がりの良さを両方生かしたい方は、中力粉と強力粉を1:1でブレンドして打ってみていただくといいと思います。
■つなぎ粉(小麦粉)選びは蕎麦の美味しさを無限大にする。
冒頭でもお伝えしたようにそば粉も小麦粉も共通して言えることですが、産地や品種、メーカーによって小麦粉の性格は異なります。中力粉と言っても、強力粉と中力粉の中間(準強力粉)のものや薄力粉寄りのものがあります。一番良いそば粉、良いつなぎ粉というのは個人差やそば粉との相性もあったりしますので、様々な粉を試していただいて、ご自身にあったものや実現した食感や味わいによってを使い分けながら打っていただきたいと思います。弊社で取り扱っておりますつなぎ粉は、そば粉の色を極力邪魔しないように白色に近いの中力粉と強力粉、福井県産の準強力粉をそれぞれご用意しております。
うどん用粉、中華麺用粉、パン用粉など同じ小麦粉でもたくさんの銘柄や種類があるのは、上記のように粉の色や粘り、風味など用途によって調整されているからです。これらはそば用つなぎ粉として使用しても問題はありませんが、薄力粉寄りの小麦粉だと繋がりにくくなります。市販のお好み焼き粉やてんぷら粉等は粉自体に味付けされていたり、油を含ませてありますのでつなぎとしてはご使用にならないでください。
■つなぎ粉に使う小麦粉は、国産より外国産が適してる!?
安心安全の観点から安い外国産ではなく、純国産の小麦粉をお求めになる方は多いです。やはり日本の生産者をはじめ国内で栽培された作物は世界的に見ても素晴らしく質が高いと思います。すべての作物には品種や産地ならではの気候・土壌というものがあります。日本においては在来種を始め、日本に適性を持たせた改良品種が作付けされているのですが、日本国産と外国産では「食感」、「粘性」、「香り」に違いが結構出ます。
「食感」と「粘性」については、国産の小麦粉は外国産に比べてグルテン含有量が少ない傾向にあるので、仮に強力粉と書かれていても中力粉との中間の準強力粉、中力粉だと薄力粉寄りくらいに思っていただいた方がいいです。どちらも蕎麦のつなぎ粉としては問題なくお使いいただけますが、繋がりや噛み応えが弱かったり麺としての持ちが悪く早い段階で切れ切れになってしまうかもしれません。そして「香り」。ここが蕎麦のつなぎ粉には外国産の方が良いという大きな理由になるのですが、蕎麦に比べて小麦の方が香り成分が強く、高品質な国産小麦を使うと蕎麦の香りをぼやけさせる要因になり得ます。そのため、あえて香りの弱い外国産を使うことで蕎麦の香りをなるべく生かすようにするという方も多くいます。
■そば打ちで余ったつなぎ粉(割粉)は、うどん粉の代用品として手打ち饂飩も打つこともできる。
つなぎ粉は小麦粉なのでうどんに限らず、きしめん、ほうとう、冷麦、そうめん、手打ちパスタなどなんでも作れます。パンやベーグルなどは生地のもちもち感が重要ですから中力粉よりもグルテンの多い強力粉の方がいいです。もしそば粉がちょっと残ってしまった場合には、小麦粉と半々もしくは3:7くらいの割合で蕎麦パスタを作ってもおもしろいですね。一般的なうどん粉は薄力粉と中力粉の中間くらいの粉で、小麦の中層から内層の部分を粉にしたものです。全粒粉やグラハム粉などの香りが強く色が出やすい外層部分は含んでいません。小麦も蕎麦も米も穀物に共通して言えることは粒の中心に甘みが一番感じられるでんぷん質が詰まっていて、外層に向かうにつれ香りや旨みのあるタンパク質になっていきます。
そば粉は1番粉、2番粉、3番粉と大きく3種類に分けられますが、それぞれ内層粉(純白の御膳粉・更科粉・打ち粉)、中層粉(手打ちそばに適している粉)、外層粉(甘皮そば粉)です。お酒では大吟醸、吟醸、本醸造など米をどれだけ削るかという精米歩合と造り方で区分けされています。二八ブレンド粉のようにあらかじめブレンドされているそば粉で蕎麦打ちされる場合は無駄がなくていいかもしれませんが、そば粉とつなぎ粉を別々に用意される方はどうしても余りが出ます。そば粉と違って小麦粉は数か月、保存しても大きく劣化はないにしても、できれば新しい粉を使いたいですね。
■蕎麦のつなぎには小麦粉以外にどんなものがある?
全国で使用されている蕎麦のつなぎとしては、卵、山いも、そばがき、海藻(へぎそば)、植物の繊維(オヤマボクチ)、大豆粉などがありますが、つなぎの選定によって蕎麦の食感や味わいが大きく変わります。小麦粉だけでなく、色々なつなぎを使ったお蕎麦を楽しんでみてください。
↓ここから小麦粉(つなぎ粉)についていただいたご質問にお答えいたします。
Q:ニ八の配合でつなぎ粉を強力粉と中力粉を半々にまぜるメリットはありますか?混ぜない方が良い結果が出ますか?
【回答】
そば粉同様につなぎ粉も色々な特徴を持ったものがありますので、お好みに合わせて色々試されるとおもしろいと思います。強力粉は粘りが強いので繋がりやすく、歯ごたえのあるそばになりますし、中力粉は強力粉ほどの粘りがない分、固くなりすぎずツルツルとした食感が楽しめます。
つながり良く、適度な歯ごたえとつるつるした食感を併せ持つというところで、半々でブレンドしたいわゆる「強めの中力粉」を用いられる方もいらっしゃいます。
Q:うどんの打ち粉に使う為の薄力粉はありますでしょうか?
【回答】
弊社オンラインショップでの販売は行っておりませんが、お問い合わせいただければつなぎ粉(割り粉)と同じ規格にて薄力粉をご用意いたします。ホームページから他の商品と共にご注文いただく場合は、ご要望欄にご入用の数量をお書き添えください。また、薄力粉のみのご注文の場合は、お電話(0776-54-0578)、FAX(0776-54-4268)、お問い合わせフォーム、メール(info@soba-sueyoshi.co.jp)をご利用ください。