いよいよ福井の秋そばも播種時期を迎え、県内そば産地では7月下旬より福井在来種の播種はが始まっています。炎天下の中で畑を耕して種を播いていく作業は、機械を利用するといっても農家さんにとって過酷な環境での作業になるため、体調管理には注意して進めていただきたいと思います。
そんな中、福井はこのところ晴れ続きで雨がありません。播種しても土中の水分だけでは発芽まで至らない圃場もすでにいくつか出てきており、土が湿る程度の弱い雨が欲しいところです。ソバの天敵である台風は連発してありえない動き方をしていますから、まとまった雨が降る前に一定の高さまで育ってもらいたい気持ちです。
福井県は県全域で在来種のソバを作付する全国的に見ても特色あるそば作りを行っている在来種王国として認知されつつあります。しかし、福井のソバは転作作物として水田での作付が多いことから湿害を受けやすく、収量が不安定であることが長年の課題です。そこで福井県農業試験場が、特に被害を受けやすい播種直後の湿害を回避軽減するための技術として「ソバ小畦立て播種技術」というものを開発しました。
ソバ小畦(こうね)立て播種とは・・
種子を地下に埋めず、地表面に並べておいて種子の両側から土を切り盛りして、覆土しながら排水溝と畦を同時に成形します。通常より種子を高い位置に播種できること、ならびに種子の周囲に排水溝ができることから種子が長時間水没するリスクを軽減することができるというものです。
▼写真上が通常の播種、写真下が小畦立て播種
通常の播種は等間隔で水はけを良くするための溝切りを行い、筋蒔きでソバを播種していきます。小畦立て播種は細かい盛土によって水はけのための溝ができています。
そもそも湿害はどうして起きるのか・・
通常、ソバの播種は播き溝を切って種子を落とし、土をかけて埋めるという工程で行われます。しかし、種子の周囲に水が溜まるような強い雨が降ると湿害が発生し発芽不良を起こします。また、種子が完全水没するような状況になれば発芽自体しなくなり、その後、水が引いたとしても湿害に遭ったソバは発芽しません。
小畦立て播種によって期待できる効果
小畦立て播種によって発芽後の根元の湿度が低下するほか、根の周囲の通気性が良くなる為、立ち枯れのリスクが抑えられます。また、圃場全体の生育が揃うので、雑草の発生を抑制できます。
もともと終了水準が高い条件では収量性に大きな違いは現れませんが、排水性の悪い圃場など収量水準が低い条件では、小畦立て播種の方が多収となります。これは、小畦立て播種により出芽・苗立ちが安定することに加え、株の生育が良好となるため、花房の着生が少なくなる条件でも着粒が安定するためだと考えられます。
昨年は過去に例を見ないほどの大凶作だった福井在来種。
今年は豊作になってほしいなんて贅沢は言わないので、せめて例年通りに採れてほしいと願うばかりです。