私たちは「福井県産無農薬栽培の玄そば」を使用し、伝統の石臼と製粉技術で試作を行い、業務用そば粉を作り上げます。
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ブルターニュのガレット粉を製造する会社を訪ねてきました。福井県産の品種と栽培の違い、カガセイフンのそば粉の挽き方の違い、粉に対する考え方……ジャン社長からお聞きしたすべてが新鮮と驚きに満ちた経験になりました。
加賀 今年収穫したそばは一年以内に使ってしまうのでしょうか?
ジャン社長 まだ2016年産が700トンあります。換気して管理すれば細菌は発生しないのでそのまま保管しても大丈夫です。ブルターニュ地方は雨が降る土地なので、収穫したそばを乾燥させずにそのままにするとカビが生えてきます。
加賀 原料は年間どれくらい確保しているのですか?
ジャン社長 ここは1年ももちません。700トンほど保管している協同生産組合もあります。天候が悪くなることも含めて考え、2016年産のものも保管しています。その場合ストックの費用を支払わないといけないんです。中国と仕事をしている時は2年分をストックしていましたし、ロシアで火事があったときはそばの値段が3倍になりました。今年はたくさん収穫できたので、ストック費用も少なく、原料も安くなりました。
加賀 原料の段階、いくらくらいで取引されているのですか?
ジャン社長 種の値段はわかりませんがジタは1キロ2.80ユーロです。一般的なそばよりもほんの少し高いくらいだと思います。今年は種の価格はかなり下がりました。フランスではたくさんとれたので1トン当たり400ユーロくらい。ロシアは1.90ユーロで取引するらしいです。市場としてはロシアが一番大きいです。アルタイのそばで、リトアニア、バルト諸国が生産地です。
加賀 福井県では45キロの種で1.5~2.5倍の収量を見込めます。ブルターニュではいかがですか?
ジャン社長 アルプであれば平均1.5倍か2.5~3倍です。よい収穫には、よい生産者とよい土壌が影響します。私たちは土壌準備に注意を払いました。まず、温かい土が必要だったのです。ブルターニュ地方はいつも冷えているので、温かい土のある畑は珍しいんです。
そこでフリーランスのテクニシャン(技術屋)に依頼して、土壌分析をしました。農協的なところに在籍している技術者は余計なものを売ろうとするので避けたくて……(苦笑)。とにかく土壌分析のプロは、土地のクオリティを調査して、1ヘクタール当たりどれくらいの種を蒔けばいいのか計算をしてくれます。
ジャン社長 福井の場合、そばは1年間でどれくらい収穫があるのですか?
加賀 福井市では3800トンあります。福井県全体で1万7000トン。福井県の農家は自前で乾燥調整施設を持っています。ブルターニュではそばの乾燥率はどれくらいですか?
ジャン社長 14.5%がマックスです。そば粉において乾燥率はすごく重要です。14.5%より上だとカビやリステリア菌などの細菌があるので受け入れられません。生産者がロンシン製粉所に搬入しにきて、その際、そばに熱い風を当てて乾燥させます。トウモロコシ用の乾燥機で乾燥させる人もいれば、乾燥させる専門業者もいるんですよ。トラックに乾燥機と小さな選別機を載せて生産者の農場を巡回するんです。彼らは6トンくらい少量でもやってくれるんです。
加賀 ブルターニュ地方での栽培について教えてくださいますか?
ジャン社長 私の農場では5月と6月のみ播種をします。品種は主にアルプですが、もうひとつのジタという品種もあります。ジタはリトアニア、ポーランド、ウクライナ、ロシア由来の品種で輸入している種。アルプに比べてジタは最低でも2回花が咲くこと、均等な質で収穫できるという利点があります。
経験上、土の温度が高いほうがよいです。あとは水です。ジタはあまり水を必要しませんが、アルプは水を必要とします。そうそう、ダチュラ(チョウセンアサガオ)に気をつけてください。ブルターニュではダチュラがあると10年から20年その畝がダメになってしまいます。この畝で栽培したそばを食べて入院した人もいます。食べると神経に問題が起こるんですよ。ロンシン製粉所でより細かい選別機を入れたのはダチュラを排除するためのものでした。
加賀 日本ではそばを育てた後転作で水稲をやるので、そのときにダチュラが消えます。9月に水稲を刈り取り、10月に麦を蒔いて翌年6月に収穫、そのまま大豆を蒔いた後、8月にそばを播きます。大豆とそばを収穫した後は、また水稲栽培に戻ります。田植えは翌年の4月です。
ジャン社長 麦の残留物などは問題にはならないのですか? そばの乾燥は大丈夫なんですか?
加賀 大丈夫です。そばは1ヘクタールあたり40キロくらいを蒔きます。花は1回です。
ジャン社長 今年のジタは1ヘクタール47キロくらいです。アルプはとても背が高くなる植物です。そのため風があると倒れてしまうのが問題です。
加賀 ブルターニュ地方は、雨が降っても水はけがよいのですか?
ジャン社長 大雨だと問題ですが雨より風のほうが問題です。フランスでは、猟師たちがイノシシなどをおびきよせるためにそばを播きます。
加賀 日本では鹿が一晩で全部食べることがあります。
ジャン社長 面白いですね(笑)。
加賀 日本のそばも見てくださいますか? 福井県では全域で在来種のみを栽培しています。県内で産地が違うもので、日本でも珍しいです。
ジャン社長 素晴らしい! 私たちも在来種をやろうとしています。最終的に国の認証を取りたいのです。
加賀 カガセイフンは石臼製粉がメインで1時間に1キログラムの生産です。うちでは石臼が36台回っています。
ジャン社長 ぜひ見てみたい! フランスでは石臼挽きはほとんど消滅してしまっています。
加賀 フランスには石臼製粉、石臼自体は残っていないんですか?
ジャン社長 石臼そのものは残っています。顧客の注文やそばの状態によって石臼を通した方がいいものもあります。しかし石臼にはシリンダーが必要ですし、石臼で製粉をする場合はブルターニュの振興協会の許可(認証)が必要なんです。
ジャン社長 パンは作らないんですか?
加賀 そばではあまりつくりませんがパンケーキは作っています。
ジャン社長 私は25年前にこの工場へきて、そばをベースにした新しい商品を探し始めました。最初は小麦の生産が多かったんです。今ではそばの生産へ移り、焙煎したそばを使ってスペシャルなパンを作ったりもしています。そば茶を作る人、はちみつやウイスキー、ビールを作る人もいます。アパートでできる家庭菜園用のそば畑も考案しました。七面鳥や鶏を育てる農家にそばを供給していますし、殻も売っています。そうそう、殻を使ったバイオマスで発電する人にも販売していますよ。そば殻を混ぜてガスを作り、ディーゼル発電機で電気を作っています。
カガセイフンのそば茶には、まだ殻が入っていますね。フランスでは高級食品店でこのそば茶のような製品があります。パティシエがお菓子やチョコレートの中に入れたりトッピングしたり。そばは今すごく流行の食材になっているんです。農薬も必要ないし、使用していませんし。農家さんも肥料もいらず安い製品なので興味を持っています。今年は去年に比べて収穫がよかったですからね。
加賀 ガレット用の粉は石臼で挽いた方がよいですか?
ジャン社長 そばにも色々なレベルがあります。「より細かくしてほしい」「粒子が大きく黒くなるようにしてほしい」、それらはすべて顧客が指定します。私にとっては石臼がいいと思っています。粒子が大きく出て、そのあとどう細かくするか、によりますけれども。
加賀 製粉会社から顧客に提案するということはないのですか?
ジャン社長 ないですね。地方によってガレットの料理法が違いますから、提案をしきれないんです。北や西の地方では色が薄い方がよいとか、小麦粉の風味に似たクレープにしたいとか、逆に南の方では黒くて粒子の大きい方がいいという人もいます。先ほど申し上げたように「細かくしたい」「大きい粒子で黒い色にしたい」など、すべて顧客が指定します。
加賀 顧客から品種や産地を求められることはありますか?
ジャン社長 あります。顧客からは「ブルターニュの伝統的な品種がほしい」と言われます。北の地方の顧客は小麦粉に近い白い粉を求めてきますね。
クレープリー・グルマンの会に参加しているクレープリーの9割は、ブルターニュの伝統的なそば粉を求めてきます。アソシエーションから年に2回検査官が調査に来て、伝統的なそばか、phや酸度などを満たしているか、組織の基準を満たしているかチェックします。基準をクリアした粉であるからこそ、ガレットの味も守られますから。
また私はルクレールやカルフールなど大手スーパーとも取引をしています。大手スーパーの仕事は1カ月に50トンというレベルで、まるでメリーゴーランドのよう。ガレットやクレープに一定の味を求められているので、粉の良し悪し、おいしいまずいは関係なくて、仕様書がきっちりしています。ですが今年から大手スーパーもブルターニュ産のそば粉を要求してきました。フランスの消費者も地産地消的な特徴がはっきりしたものを買うようになったからでしょう。消費者は少々高くても素性が分かるものがほしいという流れです。それはいいことです。それによって農業者がよりよい生活を、収入も保証されるようになりますから。
加賀 貴重なお話ありがとうございました。ぜひ今後ともお付き合いをさせてください。
==Minoterie de Roncin (ロンシン製粉所)を訪ねて その1を読む
ロンシン製粉所には、サラザンドッグ?が出迎えてくれました。愛嬌があってすごくいい感じ。お話を聞いている間も、サラザンドッグが僕の手をヨダレたっぷりの舌で舐めるので手のやり場に困りました(苦笑)。
思い出されるのがかつてスコットランドとアイルランドへ旅した時のこと。スコッチの現場ではウイスキーの原料である麦芽を食べに蒸留所へ入り込んだネズミを駆除する目的でモルトキャットがいて、日本でも有名なマッカラン蒸留所へ行ったときも数匹確認できました。実際にネズミを追いかけているところは見れなかったです。日本では工場に動物がいるという状況はあまり良い印象を与えないように思われますが、外国ではそれが一つのウリになっているように感じました。
サラザンドッグもソバだけにそばに寄りつく害虫を駆除するために常駐していてほしいです(笑)。
==Minoterie de Roncin (ロンシン製粉所)を訪ねて その1を読む
「そばの品質や鮮度を下げないように」という考え方は日本もフランスも共通しているが、焼き菓子にするフランスと茹で麺にする日本では、向かう方向が全く逆(お互いにありえない理解に苦しむ製法)だというところが実に興味深い。
最後に昔使用していた石臼を拝見した。水晶物が多く入り込んだ火山岩で軽石のように気泡がかなり含まれていた。石臼の目は内側と外側で2重構造になっていて、あくまでそばの実を粉砕するためだけの目立てだった。ジャン社長曰く、石臼挽きと機械挽きでは、そば粉の品質に差はないとのこと。確かにあの目立てでは石臼と機械挽きの差は生まれないだろうと思う。原料は過乾燥、製粉後は寝かせ、製麺するわけではないので全く問題ない。石臼挽きでは製造効率が悪く粒度帯も安定しないので、ロール挽きの方が経営的にもガレット粉としては向いていると感じた。
一方、石臼製粉しているファティゲ製粉所は人気の粉屋ということで視察ができなかった。
フィションさん(クレプリー・デュ・シャトー Crêperie du Château オーナーシェフ)の「2年かけてガレット粉を探していきついた粉がファティゲ製粉所。取引をしてもらえるようになるまで4年かかった」という話を聞くと、石臼製粉にこだわる理由がどこかにあるはずだ。他の製粉所と使用する原料や製粉後の処理などに差はほとんどないと思うので、石臼での挽き方に差があるのだろう。石臼を使う人、使いこなせる人によって粉選びも変わると思う。フィションさんはそば粉の性質を見極めて、素材を生かすために最初に何をすればいいかを考えられる本当のプロだと思う。だからそば粉も石臼挽きを選んだのではないだろうか。
ロンシン製粉所では、新しく取引が始まる際はかならずヒアリングを行って、顧客の希望や要望を形にするという。定番製品はもちろんあるものの、顧客ごとにオーダーが違うため価格も違う。渡欧する前は、フランスの製粉所は単なる流れ作業を続けているのかと想像していたが、予想に反した意外な話だった。ジャン社長は「工場ができた数年後に小型の石臼を導入して製粉したい」とも話していた。2年後か3年後に収穫の現場を見に再訪したい。
Minoterie de Roncin
S.A.R.L Henri TUAL
B.P.4 – 56801 Ploërmel Cedex
TEL: +33 2 97 74 01 37
fax: +33 2 97 74 06 00
http://www.minoterie-de-roncin.fr/
○クレープリー・グルマンの会
http://www.creperiesgourmandes.com/
○BléNoir Tradition Bretagne協会
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