ガレットパンにも違いが!
フランスは電圧200Vの国。230℃~260℃で一気に焼き上げるそうです。
フランス人が求めるパリパリ感は高温での焼きがあるからかもしれません。
フランスのスーパーで見つけたホットプレート売り場にて
- 越前そば粉屋6代目加賀健太郎ブログ
- ガレット(Galette)に触れるフランス視察①:世界3大そば産地のフランスで福井のそば粉の評価を得る
フランス・パリにおいて、福井県産そば粉とフランス産のそば粉とを比較するプロモーションイベントが開催され、加賀健太郎がプレゼンターを務めてまいりました。またガレットの本場・ブルターニュ地方へ赴き、ガレットレストランや製粉所を訪ねて意見交換を行いました。
パリのモンパルナス駅からTGV(フランスの新幹線のような列車)に乗って1時間30分、ブルターニュ地方の中心都市「レンヌ (Rennes)」へ。ここを起点にレンタカーを借りて「ヴァン・ド・ブルターニュ(Bain-de-Bretagne)」「サン・マロ(Saint-Malo)」「ヴァンヌ(Vannes)」を巡ってきました。
なぜ、ブルターニュ地方なのか? それは食のルーツにあります。フランス・ブルターニュ地方は、ソバ栽培が盛んな地域でそば粉をクレープ状に焼いて具材を包んで食べる「ガレット料理」の有名なエリア。そう、日本のレストランやカフェで出されているガレットのルーツはフランス・ブルターニュ地方にあるのです。
私はガレットの本場を食べ歩き、ガレットとフランスの深いつながりを肌で感じつつ、そば栽培から製粉工場を視察し、さらにガレット店のクレーピエから生の声を聞きました。
ガレット&クレープ専門店
ラ・ヴィオレット(La Violette)ヴァン・ド・ブルターニ(Bain-de-Bretagne)
ランチに合わせて車を走らせたレストラン。外観からなんともフランスの田舎町のおいしいレストラン!の期待が持てます。
ブレッツカフェ サンマロ店
(Le Comptoir BREIZH Café)サン・マロ(Saint-Malo)
フランスの南西にあり、港町として栄えている都市サン・マロへ。日本にもガレット店を出店しているブレッツカフェさんを訪ねました。
バラッド・クレープリー
(Balade en Crêpanie)フランス・ヴァンヌ(Vannes)
ブルターニュの南西、地方都市へ。12世紀中世の面影がそのままに、歴史ある街でした。ここではマルシェ巡りもできましたよ。
レピ・デ・ブレ
(L'Epi de Blé)フランス・レンヌ(Rennes)
レンヌ駅前には軒並みガレット店が並んでいました。このレストランへ夕方に入店したところ、あとからあとから人が訪れる人気店!
ラ・ビゴデンヌ
(La Bigoudenne)パリ・モンパルナス(Montparnass)
パリっ子から「ガレットを食べるならモンパルナスへ」とプッシュされて行ってきました。
マルシェのガレット
食事もデザートも具材によってなんでもアリ! マルシェ巡りをすると無限大の組み合わせを思いつきます
比較するのはフランスの郷土食「ガレット」に使用する「ガレット粉」です。
カガセイフンは自社商品である福井県産そば粉『越前ふくいのガレット粉』を提供しました。
現地でガレットとクレープの専門店を営むクレーピエ(ガレットやクレープを焼く職人のこと)が比較対象で用意したのはブルターニュ地方の超有名な製粉所「Au Moulin de la Fatigue(ファティゲ製粉所)」のガレット粉。ファティゲ製粉所のガレット粉は「有機栽培のソバを使用」「昔ながらの石臼挽き」という特徴があります。有機農産物の認定を受けており、いわゆる「ビオ製品(bio)」。「福井県特別栽培農産物認証制度」を受けたそば粉や「有機栽培」「オーガニック」を基準に「福井県特別栽培農産物認証制度」を受けた玄ソバを扱うカガセイフンと同じ条件、相手にとって不足なし!
ガレットとクレープの専門店を営むクレーピエ(ガレットやクレープを焼く職人のこと)や飲食関係者の方々に、
を使って、ガレット料理を試作し、評価をいただく。
実はこれまでカガセイフンには「国産のガレット粉がほしい」「福井県産のガレット粉がほしい」とお客様からご注文がある一方で「本場フランスのガレット粉と比較したい」「地元ではどんな具を入れて食べるのかを知りたい」という声もいただいていました。フランスを知らない私はそのような声に答えられず、歯がゆい思いを抱いていたのです。
「いったいどんな違いがあるんだろう…」と知りたかった私は、なんと地元のクレーピエに使っていただき、直接意見をいただける機会を手に入れたのです。そしてクレーピエの方々からは思ってもみない感想ばかりでした…!
福井県産は液体生地が良い状態で長持ち
焼いたとき、黄金に輝く生地に心躍ります。
私が普段作るように、フランス産の粉と同じ割合でカガセイフンさんの粉でタネ(液体)を作りました。最初に感じた違いは“粘り”です。私は粉の状態をみて焼く1時間前くらいにタネが出来上がるよう、水を少しずつ足すわけですが、福井県産の粘りのおかげか思ったより水を入れますね。フランス産よりも福井県産のほうが寝かせる時間を長めにとったほうがいいのではないかと思いました。フランス産にはない独特の粘りとぬめり、これは逆にあるほうが扱いやすい。非常によい点は、一度ガレット用のタネを作ると、よい状態でとても長持ちする、というところでしょう。
福井県産のそば粉にはもうひとつ、酸味がありますね。この酸味は最初焼け焦げた味だと思っていたのですが、よくよく食べてみると皮のえぐみを感じます。生地にして噛んで食べると、喉の最後の最後のところで苦みとえぐみがあります。決して悪いものではなく、むしろ良い個性です。この苦みは香ばしいガレットになる証拠です。色もいい。福井県産そば粉のガレットの黄金に輝く色あいが非常に気に入りました。
味の違いですが、フランス産に比べて柔らかく、優しい感じがします。そばの香りがして、味わいが丸い。小麦粉でつくったクレープを思わせます。福井県産そば粉は香りがあるし、味もあるから、甘いものに合わせると思ったより味に変化が出て面白い食材です。フランスでは、ガレット粉を使ってデザート用は作ることはあまりないんです(フランスではガレットの後に食べるクレープは小麦粉で作るのが一般的)。福井県産のガレット粉にどんな食材を合わせるかはクレーピエの腕次第になるでしょう。
フランス・ブルターニュ地方のそば粉を使ったガレットのほうが、見た目の印象で厚みがあると思いました。水の量にも関係しているかもしれませんね。福井県産そば粉のガレットは私が食べたことのないような繊細な味がしました。オリジナルな味、インパクトがあったのです。ブルターニュ地方のガレットはちょっと大味な感じです。フランス産に比べると香りもよく、これは品種の違いというよりソバの挽き方の違いによるものと思っています。
ガレット料理は、タネを作るため混ぜたり練ったりする作業を必要とします。福井県産そば粉のガレットは作業が大変しやすく、私も気持ちよく調理することができました。驚いたのは保存に耐えられるという点。まとめて保管しておく場合には向いていますね。
そばの実(抜き実)のデザートは、牛乳とそばの実をミキサーに入れて漉してアイスにしたものです。牛乳と合わせるとすごく「そば」を感じました。福井県産のほうが香りも味も濃く強くでる印象です。カガセイフンさんが作られた国産「そば茶」もおいしい。飲料としても食材としても試してみたい味ですね。(パティシエ杉山氏)
フランス産と福井県産では食感に違いがあります。フランス産のガレットは特にまわりがパリパリしていますが、福井県産は粘りがあって柔らかです。粘りというよりソフトといったほうがいいでしょう。カガセイフンさんのガレット粉は、フランスの小麦粉とガレット粉との中間くらいという印象です。また、フランス産に比べてテクスチャーが細かく、調理作業がしやすいですね。
フランス人にとってそば粉は「ガレット」以外にはイメージがしにくい。今回試したそば粉はニョッキにするとぐっと味が前面に出るので、メニューに載せたいですね(ロマン氏)
マッシュルームはどうでしょうか。
生のキノコを使う場合は、トウモロコシの粉でクリームを使ったりすることで水分が外に出ないようにします。グリーンピースや豆類、お肉のパテもいいです。レストランでもフォアグラなどが人気です。魚にも合うガレットレシピを考えられます。
座談会には、食のジャーナリスト(「フランス・スシ誌」所属)のソフィー・ガレさんも参加してくれました。
座談会後にフェイスブックにイベントの報告記事を掲載してくれました!
カガセイフン謹製の「そば茶」や持参したそばの実(抜き実・玄そば)にも関心をいただきました。フランス人はソバを食材として捉えていて、どう調理できるかなどの意見をいただきました。
今回はシェフとの座談会でしたが、次の機会があれば卸売業やバイヤーさんとお話をしたいです。世界三大そばと呼ばれる日本(福井)とフランス(ブルターニュ)、ロシア(アルタイ)を結び、そば関連商品で交流ができれば、そば文化をいろんな国の方に伝えられるのではないかと思いました。
福井県産
フランス産
共通点
フランスは電圧200Vの国。230℃~260℃で一気に焼き上げるそうです。
フランス人が求めるパリパリ感は高温での焼きがあるからかもしれません。
フランスのスーパーで見つけたホットプレート売り場にて
これまで何度か「フランス産のそば粉の取り扱いはありませんか?」というお問い合わせをいただきました。そのたびに私は「ガレットに使うそば粉はなぜフランス産がいいのか?」「なぜ国産ではご満足いただけないのだろう」「フランス産は福井県産に比べてどこが優れているのか?」などと感じていました。
しかし今回フランス・ブルターニュ地方で出会った方々が、長年抱いていた私の疑問に応えてくれたのです。
重要なポイントは「水と熟成(発酵)」。ガレット生地の色の濃さやパリッとした食感は水と熟成にあったのです。フランスは硬水です。そば打ちに硬水は合わず十分な味にも形にもならないのですが、ガレットづくりではこの硬水がいい仕事をするようです。
この硬水は、そば粉の粘りを引きださないという特徴がありました。サラッとした生地ができるので、高温でサッと焼くとパリッとした食感が出やすくなります。また硬水に含まれている石灰分がそば粉の色を十分に発色させる働きがあるようです。
ガレットタネの熟成(発酵)とは、黒く発色させて滑らかな生地にすることをいいます。熟成期間が長くなると全体に気泡が生まれ、焼いた時にポツポツと細かい穴が開くようになります。クレーピエは、好みの熟成具合になったら焼き上げる直前に水を足して調整していました。熟成させすぎると酸が出て劣化が始まりますので、見極めが重要です(熟成の目安や見極めについて知りたい方はお問合せください)。
フランス・パリのイベントでお話を聞いたシェフたち、ブルターニュ地方で会話を交わしたガレットレストランのシェフたちからは「カガセイフンのガレット粉に触れると創作意欲が湧く!」と好感を持ってくださいました。福井県産が持つ独特の粘性と、粉から立ち上るそばの香りを魅力に感じてくれました。
フランスと日本のガレット粉の違いは、品種や製粉によるところもあります。しかし私が感じた大きな違いはガレット生地の作り方であり、水や発酵、焼く温度に関係することが分かりました。クレーピエたちがカガセイフンのガレット粉を高く評価してくれたのは、彼らがそば粉を知りつくしていたからです。私は彼らから直接ガレット粉とガレットの作り方について助言をいただき、私にとって大きな財産となりました。フランスで得た知見をもとに、お問い合わせくださったお客様に合わせてガレット粉の提案をいたします。無農薬・有機栽培の食材を使い、そば粉の仕上がりにも厳しい目を向けるフランスのクレーピエの方に「使いたい!」と感想をいただいたカガセイフンのガレット粉。ぜひ一度、あなたの手でお使いになってみてください。
カガセイフンではカフェ・ガレット店様向けにあなたの店だけの「ガレット粉」をご提案いたします