いよいよ今回の視察の一つの目的である、福井県産とフランス産のそば粉を使ったイベントについてお伝えしていきます。このイベントの目的は、「福井県産そばのブランド力を高めるため、麺以外においても新たな需要開拓を行うこととし、食の情報発信力の高いパリで福井県産そば粉を使ったメニューを提供するなどの話題作りを進め、県産そば粉の魅力と知名度を向上させる取組みを行う」というもの。
試食していただく方が一般のお客様ではなく、フランス国内で実際にクレープリーやレストランを営んでいる料理人なので、プロの視点から福井県産そば粉の意見や評価がいただける大変貴重な経験になりました。
会場はパリ市内のLa Maison du Saké(ラ・メゾン・ド・サケ)。
ぜひ、ガレット文化のフランス人にも福井の越前おろし蕎麦も味わっていただこうということで、パリ市内にお店を構える越前そば東郷さんが使用している福井県産そば粉を分けていただき、イベント開始前にフランスの硬水でそば打ちしました。
それにしても硬水で初めてそば打ちしたんですが、水が違うと打っている質感とか生地の状態が日本で打つのとはまるで違います。
例えば、加水して水回ししている時に本来なら立ち上るように香ってくるそばの香りがほとんどしないんです。でもこれはそば粉の状態が悪いとかいう事ではなくて、おそらく硬水の石灰分がそばの香りを殺してしまうのではないかと思います。それから気候というか空気の違いでしょうけど打っている時もやけに乾燥が進むし、石灰分が関係するのかそば粉の粘りが出てこないので切れやすく伸びにくい。多加水にはならないように加水量には注意しましたが、これは別の意味でなかなか見極めが難しいなと感じました。打ち終えた後、生のままで食べてみたんですが、そばの風味をあまり感じることができなくて、まるでうどんを食べているかのような仕上がりに困惑しました。
イベントで通訳をしてくださった現地在住の日本人の方のお話では、出汁の取り方や作り方自体は日本式で問題ないけど、硬水が日本食の繊細な香りや旨みを消し殺してしまうところがあり香りが弱くてただしょっぱい感じになってしまうらしいのです。
なので蕎麦に限らず日本食を作る際は、石灰分を取り除く事が出来る浄水か市販のできるだけ軟水の天然水(ボルビックなど)を選ぶ必要があって、かつ出汁は濃いめに取らないと焼き鳥のような甘辛い味付けを好むフランス人からの支持が得られないとのことでした。
なにはともあれ、試食メニューの一つを無事仕上げることが出来たのでよかったです。
日本とフランスでソバという穀物を使うことは共通しているのに、作り出すものが全く違う。もっと言えばソバの作り方や扱い方、挽き方など、同じ粉なのに日本と全然違います。この辺りはブルターニュへ移動してから深く掘り下げていきますが、この時はそこまで奥が深いとは思ってもいませんでした。
次回はフランスと日本のガレット食べ比べについてご紹介していきます。
このブログでは、福井のそば粉屋として専門的な分野から、プロの話や技術、製法、栽培に関してなどをご紹介していきます。ガレット店の紹介や文化、観光に関しては以下のブログをご覧ください。
▼本場のガレットを求めて‐フランスブルターニュ訪問記