さらしなそば粉(更科粉・更級粉)の製粉方法には、現代の機械製粉(ロール製粉)と本来(昔ながら)の石臼挽きがある。

さらしな粉(更科粉・更級粉)についてお問い合わせをいただき、昔ながらの製法についてもご質問がありましたので、今回は更科粉について僕なりに書いていこうと思います。

更科そば(御膳そば)とは何か?その魅力とは?

更科そばは、そばの実の中心部分に含まれるデンプン質主体のそば粉を材料に「湯ごね」と呼ばれる製法で打たれた純白の蕎麦です。二番粉や三番粉といった蕎麦の実の中層から外層にかけての部分は使用せず、一番粉のさらに純度の高いデンプン質のみを使用するため、透明感のある純白色の蕎麦に仕上がります。御膳粉(ごぜんこ)と呼んだり更級粉と書く時もあります。
※「湯ごね」・・・そば粉に熱湯を注ぎ、熱によって糊化したデンプンの粘りを利用して麺線に打つ特殊な技術

更科そばを実際に打つとなると均一に熱湯が回らなかったり、季節ごとに変わる温湿度によって加水率の変化が著しく、普通のそば打ちとは比べられないほど難しいんです。また、熱を帯びている更科そばの玉を延すのがこれまた大変で、自分は経験が乏しいからっていうのもありますけど、全然思い通りにいきません。更科そばを打つこと自体難しいので、当然ながら季節の変わりそばなんて打てないです。

そんな苦労をして打った蕎麦は、香りは弱いけど甘みがある。
更科そばを「細いうどんや素麺を食べているようだ」と言う人もいます。僕も味の濃い挽きぐるみの越前そば文化で育っているので更科そばの美味しさを理解しようとさえ最初はしなかったです。
でも、更科そばの魅力は、キラキラした純白の蕎麦の美しさ、麺の透明感、つるつるしたのど越し、コリコリした食感。そして柚子切り、桜きり、芥子切りなどの「変わりそば」にすれば季節感を楽しむことができるところ。淡白だけど繊細な味わいを楽しむというか、更科そばには独特の美学があるように感じています。

福井県産 更科粉(御膳粉)のページ
御膳蕎麦粉(更科粉)の販売  福井県産の蕎麦粉を通販・販売します|末吉の越前蕎麦粉(旧末吉製粉)

現代(近年)と本来(昔ながら)の更科そば粉の製粉方法

そんな更科そば粉は、一般的に機械で製粉されています。
いやいや、本来は石臼で挽いたものが本当の本物の更科粉だよ!という方もいるでしょう。どちらも更科粉に違いありません。更科粉の製粉方法やこだわりについては、そば店、製粉屋、更科文化がある地域などの視点や考え方によって違うと思います。

福井にはもともと更科そば文化が無く、そば粉の製粉は昔から石臼挽きで色の黒い田舎そばが一般的だったので、更科粉についてはあまり知識や経験がありません。しかし、祖父の話によると今から50年以上前、まだ石臼で更科粉を製粉していた当時は、粉が純白ではなく黄色や茶色がかっていたそうです。

これは石臼で挽く際に、目を変え、挽き臼を変え、臼を浮かしたり早く回転させたとしても1番粉以外の部分がどうしても更科粉に混入してしまうことが原因で真っ白には挽きあがらず、麺帯のくすみや雑味が加わってしまう。この時代にはこの問題を何とか解消できないかと常々考えていたそうです。でも、この雑味が更科粉に香りや甘みを与え、現代の更科そばにはない独特の蕎麦になっていたことは間違いありません。

それがバブルの頃から製粉の機械化が進むと共に非効率の石臼製粉が衰退し、さらに年を追うごとに機械製粉の技術も進歩していく。昔は実現できなかった高純度のデンプン質と純白色の更科粉が製粉できるようになっていきました。味や香りは弱いけどその分、純白の綺麗な更科そばが提供できるようになり、変わりそばも他の素材の味わいや自然な色をさらに生かすことができたのだと思います。

カガセイフンで、石臼挽きの更科粉が製粉できるのか?

石臼で更科粉と挽くのは言葉でいうのは簡単ですが、先ほどのそば打ち同様、非常に手間がかかり、そう簡単に挽けるものではありません。弊社は明治10年の創業以前より使用している石臼を今でも大切に使っていますので、先々代が更科粉を挽いていたと思われる石臼(100年~150年モノ)と製法を用いれば、当時提供していた更科粉に近いものを製粉できるのではないかと思います。
ただ、そのそば粉は私たち”福井の粉屋の感覚”の更科粉なので、一般的に更科粉と言えるものかどうかが分かりませんが、せっかくの機会ですし一度トライしてみます。
昔は作りたくても技術的に難しかった純白の更科そばが当たり前に食べられる現代だからこそ、本来(昔ながら)の手間暇かかった「石臼挽きの更科そば」の価値があると思います。

「さらしなそば」は、「更科そば」と「更級そば」どちらが正しい?

「さらしなそば」には「更科そば」や「更級そば」と書かれていることがあります。どちらが正しいのかなと思ってネットで調べてみると諸説あるものの「更科そば」の方が正しいようです。

以下、Wikipediaより引用
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創業は江戸時代寛政元年(1789年)と伝えられている。信州の織物の行商人をしていた清右衛門なる者が、江戸での逗留先としていた麻布・保科(ほしな)家に勧められ、麻布永坂町で蕎麦屋をはじめた、とされている。開店に際し清右衛門は太兵衛に名を改め、開店時に「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」の看板を掲げたという[1]。「更科(さらしな)」は、蕎麦の産地である信州更級(さらしな。現長野市、千曲市、埴科郡坂城町の一部)に保科家の「科」の文字を組み合わせたもの。なお、信州更級は当時よりソバの産地であったため、他にも「さらしな」を名乗る蕎麦屋は存在していたようである。
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更科そばについて思うことを書いてみました。
時間を作って福井県産の「石臼挽き更科そば粉」を挽いてみたいと思います。
そば打ちは自信ありませんけど、石臼挽きなら多少上手く打てるのかもしれませんね。

[3月25日(水)]
玄そば産地:福井県大野市産(早刈り品)、坂井市丸岡町産(早刈り品)、吉田郡永平寺町産(完熟品)

天気:曇り
石臼工場内室温:9℃
石臼工場内湿度:40%
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加賀 健太郎 について

年間100店以上の蕎麦店を食べ歩き/蕎麦を食べてソバの挽き方を考える/ミシュラン星付き店へのそば粉納品事例多数/自社で開発した福井県産そばのガレット粉を本場フランス・ブルターニュでプレゼン/出張先では「体のどこを切っても蕎麦が出てくる」くらい蕎麦を食べ歩く ■ブログ→ http://kaga-seifun.com/sobako/
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