以前、お客様から「石臼挽きの更科粉(御膳粉)の製造はできますか?」というご質問がとても興味深く、弊社で昔、石臼で更科粉(御膳粉)を挽いていた例が無いか聞いてみたところ、今から50年以上前、機械化が全然進んでいない頃、カガセイフンの前身である末吉製粉所商店では、石臼で更科粉(御膳粉)を取っていたそうです。
しかもその石臼は今、銘柄【吉峰】抜粗挽きそば粉や【一乗】そばがきそば粉に使用しているものだと知り、石臼で挽いた更科粉なら通常、湯こねが基本レシピだけど、ひょっとしたら水こねで行けるんじゃないかと思い、当時の製法で更科粉を挽いてみることにしました。
↓50年以上前、更科粉を挽いていた石臼(銘柄【吉峰】、【一乗】も使用)
先代からの石臼と製粉技術を時代に合わせて組み合わせる
福井県産の玄そばを丸抜きにし、当時の製法に沿って挽きました。
この石臼は150年以上弊社で使用され続けてきたものですが、ひとつ前の旧工場(20年~40年前)では使用されていませんでした。当時、福井は越前そばの文化が普及し、黒い越前そばが普及してきた時代。粗挽きや更科粉の需要は皆無だったのでしょう。その時代時代にマッチしたそば粉づくりができるのも先代、先々代から受け継ぐ石臼と確かな技術あってこそだと強く感じます。
挽きたての更科粉はデンプン質でありながらしっとりと手にくっつきます。甘皮や2番粉辺りも若干、含んでいるためか黄色がかって見えます。歩留りは何と12%弱!1㎏の更科粉を得るのに玄そば10㎏ほど使用するという贅沢なそば粉になってしまい、販売価格を計算するのも億劫です。
早速、蕎麦打ち初段位の吉川が試し打ち。
湯コネではなく水コネで行きます。
粘りの弱いさらさらしたそば粉を丁寧に丁寧に水回ししていきます。
粘りのある2番粉の部分が多少混ざっていることもあってか、加水率60%前後で粉にしっかりと水さえまわっていれば十分に打てるような気配がしたのもつかの間、菊練りするとひび割れてくる状況に。
結局、菊練りはせず、コロコロとコネ鉢の淵で転がしながら中の空気を抜いて延しに入ります。生地が伸びにくく割れやすいので、注意しながらのし棒を押しつけて力で伸ばしていきます。
巻きつけてのす際も同様に優しく優しく・・丁寧に。
折りたたむとたたんだところから割れてしまうので、折る回数を減らして少し厚めにのして細く切ることにします。
切る時も細心の注意を必要とする更科そば。
さすが難易度の高い技術を要する蕎麦ですね。
更科粉は挽いたらすぐに製麺しないと繫がらないし、打ったらすぐに茹でないと粘りが無いから早いうちに麺が切れ切れになってしまいます。だから更科そばを提供されているお店などでは限定で提供せざるを得ないんでしょう。
更科粉(御膳粉)の今と昔で製粉技術者は頭を悩ませた!?
御膳粉(更級粉)は今でこそ、機械(ロール)で製粉するところが一般的ですが、大昔は当然、石臼で挽いていたんでしょう。僕が思うに、今こうやって純白の更科蕎麦が食べられるのは機械技術が発展したからで、当時はより白く挽くために製粉技術者は頭を悩ませたんじゃないでしょうか。
純白の更科そばが当たり前のように食べられる今だからこそ、石臼挽きの更科そばは面白い。甘みがあり口に入れた時にそばの香ばしい香りを感じる。透明感の中に若干、黄色みがかっているのもいい塩梅です。
今回のこの更級そば粉は50年以上前に弊社挽いていたもので、更科文化の本場信州で挽かれていたものとは違うでしょう。信州では当時、どのような更科そばだったのかは分かりませんが、もし昔ながらの石臼挽き更科そばが味わえるお店があったらすごく興味がありますし、ぜひ行ってみたいですね。
福井県産の石臼挽き更科そば粉(御膳粉)の販売は、原料の玄そばが不作である事と歩留りの悪さ、そしてお値段が高くなってしまうなどの理由から未定です。
ご興味がある方は、お問い合わせください。
[7月7日(か)]
玄そば産地:福井県大野市産(早刈り品)、坂井市丸岡町産(早刈り品)、吉田郡永平寺町産(完熟品)
天気:雨
石臼工場内室温:16℃
石臼工場内湿度:70%
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