おはようございます!
先週末からの大寒波によって日本海側は大雪に見舞われていますが、福井市もピーク時は20㎝ほどの積雪とかなりの雪が積もりました。雪国としては大した量ではないんですがそれでも高速道路は通行止めになり、一般道は事故渋滞も含めて車が動かず、車内に閉じ込められているという状況が続きました。すでに大雪のピークは過ぎ少しずつ雪の壁が溶け始めていますが、まだまだ気を緩めることはできません。この調子で春を迎えられたらいいなと思うばかりです。
先日、京都にて蕎麦鑑定士4級試験を受けてきました(蕎麦鑑定士については先日のブログで紹介しています)
この「蕎麦鑑定士」認定試験では4級から1級まで計4回の食味体験があり、1級まで受験すると合計48種類もの蕎麦を体験するそうです。各級においてテーマが決められ、この日の為に全国から希少なそば粉を取り寄せ、打ち、茹で、良い状態で僕たち受験者に体験させてくださる。日本各地の蕎麦を一度に体験できるなんて、なんと贅沢な体験でしょうか。蕎麦好きにはたまりません。試験の前半は、各産地・品種別に挽き分けた食味体験です。
蕎麦鑑定士4級のテーマは「全粒粉を知る」
りんごに紅玉、むつ、王林、ふじ、ジョナゴールドのような品種や産地があるように、ソバにもキタワセソバ、信濃1号、階上早生(はしかみわせ)、常陸秋そば、福井在来種など、それぞれの環境に適応した産地や品種というものがあります。
その味わいは土壌、自然環境、水、生産者によって大きく変化し、製粉の仕方(玄挽きなのか丸抜きを挽くのか、微粉なのか粗挽きなのか、石臼挽きかロール挽きか)や蕎麦の打ち方、加水する水の種類など、様々な条件が重なり合って最終的には個々のお店が提供する唯一無二の複雑な蕎麦になっていきます。
蕎麦そのものの味わいを丸ごと味わうなら僕は全粒粉だと思っています。
この全粒粉、地域によって捉え方が違っていて、たとえば福井の越前そばによく見られる全粒粉(挽きぐるみ)は、皮つきの実を丸ごと石臼で挽いた玄挽き(丸挽き)タイプで、色濃く味がしっかりとのっかり噛むほどに味わい深い蕎麦になります。
一方、脱皮した丸抜きを挽いたものも全粒粉になります。ソバの殻を剥き、丸抜き(抜き実)を製粉したものです。どちらの蕎麦も、播種するところから口に運ぶまでの間に数多くある細かい条件によって食味が変化します。そういった中で4級では、玄そばとヌキを全粒でそれぞれ微粉、粗挽きに挽き、十割生粉打ちや二八打ちなど全12種類を体験させていただきました。
【玄そばを丸ごと製粉した玄挽き】
・奈川在来(微粉)生粉打ち十割
・こそば(粗挽き)生粉打ち十割
・大野在来(微粉)二八打ち
・奈川在来(粗挽き)二八打ち
玄挽き(挽きぐるみ)はさすがと思えるほど味わい深い。そしてどの蕎麦も個性がはっきりとしていて食べる楽しみがあります。蕎麦に鼻を近づけるだけで穀物の強い香りを感じますし、噛むほどにモチモチの蕎麦の味が口に広がっていきます。
ヌキは蕎麦をすすった時の鼻から抜ける上品な香りがたまりません。蕎麦を噛むと程よく歯を押し返してくれて、モノによってはコリッとした食感があります。
【ヌキから製粉した全粒粉】
・キタワセソバ(微粉)生粉打ち十割
・常陸秋そば(粗挽き)生粉打ち十割
・キタワセソバ(微粉)二八打ち
・常陸秋そば(粗挽き)二八打ち
・中国産マンカン種(微粉)二八打ち
趣向を変えて外国産の食味もありました。
“外国産”と聞くだけで「美味しくない」「体に良くない」と思い込んでいる方もいると思いますが、果たしてそうなのか。
この日の外国産そばは「中国産マンカン種(微粉)の二八そば」でしたが、全然悪くありません。というか普通に美味しい。僕は普段から外国産もよく見ていますし、実際に粉挽きしているので外国産そばの味わいを良く理解しています。ソバは作柄が気候に大きく左右されます。良い時もあれば悪い時もあるとても不安定な作物です。弊社でも外国産玄そばを使用していますが、丁寧に手間暇かけてじっくりと旨みを挽きだしてやれば、時にキタワセにも及ぶほど香りがよく味わい深い蕎麦になる年もあります。
最後は品種ではなく、ゆで時間による食味の変化を体験しました。
蕎麦の茹で加減には好みがあります。でも、茹で過ぎるとどうなるか、また茹でが足りないとどうなのか、適性はどうかをしっかりと掴むことで、柔らかめと言いながらそれは茹ですぎかもしれないし、固めというけどそれは芯がのこった半茹での状態かもしれない。食感、味、香りは適正に茹でてこそ最もいい状態になるということの体験です。
【ヌキから製粉した全粒粉:キタワセソバ(微粉)二八打ち】
・ゆで時間[過多]
・ゆで時間[適正]
・ゆで時間[不足]
僕は蕎麦に限らず麺全般的に固めが好きです。
だからひょっとしたら自分の舌は茹で不足を好みと勘違いして、「生茹で」を判断できないできるのかもしれないと思いました。しかし今回、見事なまでの生茹で、適性、茹ですぎを体験し、茹でた方の技術がすごいな・・と感じながらもそれぞれをしっかりと感じることができたんです。
生茹では中心に残る芯が粉っぽくて歯に引っ付いてにちゃにちゃします。香りも茹で上がった蕎麦の香りではなく、普段仕事中にいつも感じている粉の状態での香りとでもいいますか、そういうところを肌で感じることによって「固め」と「生茹で」はほんの微妙な茹で加減の差で起こるということに釜仕事の難しさを知りました。
試験には無事合格しまして、認定証をいただきました。
蕎麦鑑定士試験は単に鑑定士の認定を受けるだけでなく、蕎麦の知識を高められる、また高め合えるいいきっかけだと思いました。今回の4級試験については事前にテキストをいただいていて、これがなかなか興味深い内容なんです。中で印象に残っているのは「郷土蕎麦」。福井は「越前おろしそば」が有名で食べ方が一つの文化になっていますよね。県のブランド食として郷土の蕎麦になっています。
郷土蕎麦は岩手のわんこそば、信州の高遠そば、新潟のヘギソバなど全国各地たくさんあります。名前は知っているけど食べたことないものもたくさんあるので、これをきっかけに現地へ行ってみたいとも思っています。
[2月13日(金)]
天気:雨
石臼工場内室温:6℃
石臼工場内湿度:68%
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