色黒く味の濃い挽きぐるみ蕎麦に慣れている福井県民からしてみると、信州そばのように色白で噛み応えの無い蕎麦は「そうめんみたいだ」「味も香りもしない」から美味しくないという声が耳に入ります。でもそれは「越前そば寄り」の頭で食べれば信州に限らず、関東でも福井人の舌を満足させる蕎麦はそうそうないでしょう。
でも、信州に限らずせっかく他県のそば処に来たのなら、自分の考えや価値観で蕎麦を味わうのではなくて、一旦、頭を真っ白してからその土地のそば文化、食べかた、味付け、店主の想いなどを純粋に楽しんだ方がおもしろいと僕は思っていて、なぜ、このようなそば文化が根付いてきたのか、なぜこのような味付けになっているのかを知ることで、日本そば食文化の奥深さを知り、さらに他の地域はどうなんだろうという興味がわいてくると思います。
信州は美しい蕎麦を美しい環境で食べさせてくれ、人の心をとても穏やかに温かくしてくれる素晴らしい土地だとつくづく感じました。こちらのそば処やまなみさんもその内の一店。
お店の正面に広がる蓼科湖は、薄く霧が張って体感温度が低い。
空気が澄んでいて、山の香り、湖の香りが心をリラックスさせてくれるし、鳥のさえずり、魚が飛び跳ねる音、時折通り過ぎる車の音以外、何も聞こえないという贅沢はこの地に来て始めて感じられること。
やまなみさんは信州ビーナスラインにも接していているので分かりやすいのですが、ナビで行こうとすると場所が表示されなかったり、違うところにチェックインされてしまうことがあるので、ナビには頼らずビーナスラインにのって蓼科湖へ向かえば大丈夫です。
ビーナスライン側には駐車場と裏口があり、こちらからも入店できます。
入り口が2つあるというのも土地柄と言いますか、独特でゆるい感じがいいですよね。
蓼科湖が見える席に座ってメニューを拝見。
前日にこちらの小林さんとお会いしてお薦めいただいた「おろしせいろ」を注文し、蕎麦を湯がく音だけが響く静まり返った店内で蓼科湖を見ながら時間を忘れてゆっくり待つ・・。この「時間」を楽しめるそば屋さんが信州にはすごく多い気がします。
福井だと注文したら早く食べたい!早く持ってこないかな。少しでも提供が遅いとイライラしてしまいがちですが、ところ変われば何とやら。ありがたいことです。
やまなみさんで打たれている蕎麦は、地元八ヶ岳産のそば粉を使った二八そばだそうです。
蓼科湖が見える席の一番端に年季の入ったそば打ちスペースがあり、このお店の歴史と愛情を感じられずにはいられません。
蕎麦と共にたっぷりの大根おろし(汁ごと)、お出汁、お醤油。そしてお決まりのお漬物が嬉しい。今まで食べてきた信州そばは正方形の切り口で細切りがほとんどだったんですけど、平打ちの麺線って馴染があるから惹かれるものがあります。
大根おろしに醤油を加えて、おろしと共に蕎麦をいただきます。
食べ方としては越前おろしそばとさほど変わりありませんが、味は別モノでした。
大根は辛くなく甘みが強い。醤油も福井の甘い醤油とは一味違う甘さがあってすっきりしています。このお醤油があるから大根の甘さがさらに引き立つんでしょうね。お蕎麦が上品だから大根と合わせると香りが打ち消されてしまうんじゃないかと思っていたんですが、そんなことはなく蕎麦の甘みも楽しめる。辛味の強い大根だと蕎麦の甘さが分からなくなるのかもしれません。
お蕎麦を食べ終わって時間の許す限り小林さんとお喋りした後は、お店を後に蓼科湖で深呼吸。
静か。
本当に静かで豊か。
毎年、必ずここに帰ってくる人はきっと多いんでしょう。
ふとジブリ映画の「風立ちぬ」の一コマを思い出しました。
小林さん、素晴らしいひと時と楽しいお話をありがとうございました。
[石臼挽き純手打ちそば そば処やまなみ]
〒391-0301 長野県茅野市北山蓼科4035
TEL:0266-67-2164
◆営業時間◆
[昼] 11:00~15:00
[夜] 17:30~予約営業
◆休業日◆
水曜日
◆駐車場◆
有り
[8月31日(月)]
天気:雨
石臼工場内室温:22℃
石臼工場内湿度:69%
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